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アートのイベント化がすすむ=街に飛びだす美術館
2008年11月25日 19:47 更新

■東京・渋谷駅のJRと私鉄の連絡通路に岡本太郎の巨大な壁画「明日の神話」(縦5.5㍍、横30㍍)が設置され一般公開されたのは先週の17日(月)。一日30万人が通行する手広い空間通路はたちまち通行人を圧倒する「特大の芸術空間」に変貌した。

■今、芸術やアートが街の中に次々と飛びだし出している。アートが社会と直接的に関わる活動というわけだが、それはさながらアートによる街の活性化であり、アートによる街おこしでもある。イベントが主役として担ってきたこれらの施策をアートが担いだしたのだ。見方を変えれば「アートのイベント化」と言える。

■昨今アートのイベント化現象は全国各地で見られるが、それでもまだ地域のイベントや催し物にアートが単体として参加するいわばお呼ばれという立場が多い――それはたとえそのアート自体がプロジェクトやイベントの主役であったとしても、だ。

■たとえば10月下旬に広島市で開催された「黒い花火」(仮称)。花火は花火でも当日は原爆ドームの背後の青空に70秒間、およそ1000発の黒い花火が空を染め抜いた。ドーン、ドーンという響きと共に黒い筋が次々と青空に突き刺さるように上昇し、頂点でやおらボン、ボンという音と共に花火がはじけ、巨大な黒い雲がドームの背後にひろがった。

■まさに核爆発を彷彿とさせるイメージの表現であり、広島市民に強烈なメッセージを伝えることになった。手がけたのは中国を代表する現代美術家だ。こうしたアートによる強烈なパフォーマンスでさえも地域のプロジェクトやイベントに“参加”するという立場である。つまりイベントの実質的な主役ではあるものの、その実主役(主体)ではない、という微妙な立場だ。

■ところがここにきて地域の公立美術館自体が街の中でアート展というか、イベントというか、独自のプロジェクトを展開する動きが見られるようになってきた。美術館が「街とどうかかわるのか」というテーマを掲げての積極的な動きである。つまり参加や借り物ではなく、美術館という存在が、アートという存在が、街と主体的に関わりだしたのだ。

■たとえば金沢21世紀美術館は現在、「金沢アートプラットホーム2008」を開催中だ。金沢という「場所」と地元の「人」をキーワードに美術館がいかにして街と深く関わるかを問う試みである。アーティストや建築家が参加し、美術館を核に商店街や廃屋や公園などで19のイベントや展示が開催されている。

■街とアートとの関わりを無視することができなくなったのは(筆者の知る限りでは)1994年の東京立川市の駅前再開発地に展開された「ファーレ立川アートプロジェクト」がはじまりではないかと思える。36カ国、92人のアーティストによる109体の作品(造形物)がビルの谷間や歩道に展示され、芸術と文化のメッセージが街角から発信されたのだ(現在も展示中)。

■その後新潟の広大な里山を舞台にした「越後妻有(つまり)アートトリエンナーレ大地の芸術祭」が3年ごとに開催され、成功を見るに及んで俄然アートによる街おこしが注目されるようになった(展示が展開する場は、距離にして約300㎞の広大な空間)。

■こうして公共空間におけるアートの導入は、地域の美術館が街の中でアート展を開催するまでになり、アートのイベント化に一層拍車がかかった。背景には21世紀に入って、地域の人々が美術館に期待するものがガラリと変わったことによる。

■より詳しくいえば、美術館の存在意義が問われだしたことで従来の展示や収集にとどまらない役割を認識しだしたからだ。アートのイベント化がすすめば、次にはイベントのアート志向という動きも見られるようになるかもしれない。

■そういえば今回、渋谷駅に巨大壁画を設置させたプロジェクトの統括者は岡本太郎記念館館長の平野暁臣氏だが、氏は言うまでもなくイベント企画・運営では国内の第一人者でありイベント業界のエース(日本イベント業務管理者協会前会長)でもある。アートとイベントの先端では、すでに境界を越えた融合が起きていたと言える。


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