■首都圏の冬のスポーツリゾートとして知られる越後湯沢の観光協会が今、専務理事を全国から公募している。年収は500万、年齢、性別、学歴は問わないが、観光旅行業などで10年以上の実務経験と湯沢町に居住するなどが条件だ。
■湯沢町は人口が8600人で町民の8割が観光産業(含む関連業)に従事している。一般的(全国的)には川端康成『雪国』の舞台として知られているが、首都圏ではやはり冬場のリゾートである。
■新幹線・自動車ともに首都圏からのアクセスがよく、ピーク時の92年度には1000万人以上の観光客が押し寄せていた。が、レジャーの多様化、景気の影響などから年々減少がとまらず07年度は470万人まで落ち込んだ。公募は、外部の知恵を利用して低迷する観光産業の再生をねらったもの。
■「地元以外の、外部の新鮮な視点が必要なのでは」というのが協会の考えで、観光客誘致の企画立案や協会の法人化に向けての体制づくりなどの取り組みが仕事となる。
■ピーク時の5割以下まで観光客が減少した地元は深刻である。本来なら競合関係にあるスキー場も、互いのスキー場を利用できるチケットを発行したり、スキー場を互いに行き来するシャトルバスを走らせたりしてスキー客の便益を高めるなど増員企画に頭をめぐらしている。
■ところで協会が言うところの「外部の新鮮な視点」だが、越後湯沢はよそにはない豊かな「外部の視点」を保有しているのではないか――。
■越後湯沢にはリゾートマンションが数多く建っている。(大半が首都圏に住んでいるであろう)これらマンションの保有者、利用者の利用は圧倒的に冬場が多いものの、これらの人たちのなかには各界で活躍している著名人や有能な人物が少なくない。
■5割以下にまで減少してしまった観光客を呼び寄せるための策を講じるなら、まずこうした地元と縁続きの有意の人物の知恵や視点を借りてみてはどうだろうか。
■定住はしていなくとも、マンションを保有しているぐらいだから、湯沢町の長所も短所もそこそこ知り抜いているはずだ。つまり越後湯沢を知りつつ、あわせて首都圏に住んでいる外部の視点までももっている。単なる外部の視点ではなく(越後湯沢にとっては)他の人が持ちあわせない複眼的な視点を保有している。
■これらの人に、どうして「湯沢のために、一肌脱いで欲しい」という言葉を掛けないのだろうか。全く縁のない人たちなら単なる企画の依頼でしかないけれども、「縁続きの人たち」である、しかも有意の人たちである。優れた意見や視点などを開陳して湯沢町の明日につながる貴重な示唆を与えてくれるのではないかと思えるのだが――。
■湯沢町では今月下旬、有名な「フジロックフェスティバル」が開催され10万人が訪れる(国内最大級の規模で会場は苗場・10回目)。コンサートであっても観客席は土や砂利の上であり、雨が降ればずぶ濡れになってしまうという悪条件下での3日間の熱狂的な異色のコンサートでありステージであるが、こちらは若者が相手であり、やはり興業の色合いが強い。もちろん、これはこれで地元の観光業と手を組んだ一つの大きな仕掛ではあるが、湯沢がもつ本来の観光資源とは直接的につながるものではない。
■「燈台もと暗し」ではないけれど、外部の視点や知恵を借りたいというのなら、まずは縁続きの有意の人たちに働きかけてみるべきである。たとえば仮に立ち上げたとする「外部の視点プロジェクト」には、それこそ(複数の著名人が)あの人も、この人もと言うことで参加すれば、まずそこからしてメディアの注目を浴びるのではないか。そしてそのプロジェクトを継続して、何らかの成果につなげるのだ。同じ〝人〟を活かすなら、まずは地元の縁続きを最大限、有効活用すべきでは……。
※参考:7月2日朝日新聞ネット版/越後湯沢観光協会HPより
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