■大型施設が移転するとなると、その施設の恩恵で営業が成り立ってきた周辺施設の商売はあがったりになる。東京築地では今、築地市場周辺の築地場外市場が、市場移転後のあらたな〝集客〟の仕掛けをにらんで「食のまち」を守るための手段として地域物産展を開催している。
■東京築地では現在、東京都による築地市場移転の計画が進められている。反対運動があるものの、ここにきてどうやら移転は避けられないような状況になってきている。
■もちろん跡地が従来以上の施設として利用・再開発されるのなら話は別だが、東京都が誘致を進める東京オリンピックの(一時的な)プレスセンター構想などはあるものの、まだ確かな跡地利用は決まっていない(観光用の鮮魚マーケットの構想もあるが、これはまだ未定)。
■そこで(移転には反対ながらも)移転後にそなえた取り組みが築地の場外市場周辺で次第に行われるようになってきているのだ。
■21日、場外市場では石川県白山市の物産展が開催され(白山市の多彩な食文化を紹介するセミナーも同時開催)、会場には伝統食品や清酒などが並んだ。
■この物産展の主催はあくまでも物産の供給方である白山市やその関係機関。物産展の会場を提供したのが協力で名を連ねるNPO法人築地食祭り協議会だ。
■協議会としては、東京の食の台所〝築地〟という強力なイメージを活かし、百貨店の物産展とは異なる全国の食文化の発信地にしたいとの構想がある。既に次回は中国地方の物産展が開催されるようである。
■実はこの物産展には、背景を探るとなかなか面白い仕掛けがある。協議会が物産展の会場となる場を提供して協力の名目で参加し、場を利用する地方がそこを借りて物産展を主催・開催するという仕組みだ。
■当然、主催は地方都市やその関連機関だから、開催の資金は地方側が持ち、物産を販売した利益は基本的に地方のものとなる。一方、場を提供した場外市場側は協力という名目で築地のイメージを維持し、集客の環境づくりを目指すということになる。
■都会では地方の物産展を扱うアンテナショップが繁盛している。このアンテナショップは地方直営の店舗もあるものの、あまり表には出てないが、一企業が(すなわち株式会社が)物産を買い取って「○○県アンテナショップ」として営業しているところもすくなくない。
■このスタイルだと株式会社が本業として取り組んでいるから、まだ営業が成り立ち利益が出ているけれども、これを地方が店舗の運営から店舗の要員までまかなうとなると、その資金も含めて大変である。
■そうした煩雑さやデメリットを考えると、地方は都会で物産を売る場を提供してもらい、場を提供する都会側は物産展を開催する場の提供だけで、場の特定のイメージ環境づくりができることになる。双方共に資金をあまり意識しないウインウインの関係となる大きなメリットがあるのだ。
■地方は都会で物産展を開催したがっているし、都会は何とか地方の物産展を開催して場のイメージ環境づくりによる集客をはかるという構図だ。似たようなケースも含めて今後、このケースはまだまだ増えてくるかもしれない。
※参考/日経新聞・首都圏版2月21日号
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