100万本のエクササイズDVDを売り上げた、お馴染みの「ビリーズブートキャンプ」。2007年上半期の大ヒット商品であるが、これはテレビ通販から拡がった商品。いま、テレビ通販市場が大変な勢いで拡大している。
通販市場全体の売り上げは、トップのカタログ販売を筆頭にインターネットやチラシなどを含め06年度で3兆7千億円(推計値)、テレビ通販はそのうちの1割弱となる。
しかしその1割弱の市場を形成する主要11社の06年度の売上高は2796億円と05年度比で25%の高い伸び率を示している。この伸び率の大きさは目を引く。
この売上高は三越日本橋本店の売上高2784億円や高島屋新宿本店の2570億円を上回る。国内トップの売り上げを誇る百貨店の売上高を優に上回るまでになっている。
百貨店の全体市場はどうかというと、1998年の9兆1774億円だった市場が8年連続して減少し、7兆7700億円まで減っている。トップの売り上げを誇る日本橋三越(売り上げ減少傾向にあり、伊勢丹新宿本店に抜かれるだろう)が五つ消えるほど市場のパイが縮小しているのだ。テレビの通販市場が三越の店舗一つ分を売り上げるまでに成長している一方での市場の縮みである。
こうして見てみると、日本人の購買ルート、消費ルートの多様化が進んでいるのが理解できる。にもかかわらず、
「スーパーや百貨店の売上高合計のアップダウンをさして『消費ののびは鈍い』というのは、実は全く間違いではないのか。(中略)あまり目に目えないルートで、実に多様な消費ルートが生まれている。駅中もそうだし、ミッドタウン、両ヒルズもある。多くは公式消費・売上高統計から外れている」(住信基礎研究所・伊藤洋一ブログより)
伊藤さんの指摘は正鵠を射た発言といえる。「ルミネ」「アトレ」というとJR東日本グループの商業施設だが、このJR東日本が、2015年ごろの開業をメドに、新宿駅南口に地上200メートルの高層ビルの建設が計画されている。そうなると一大消費圏新宿の百貨店や商業の地図が一変する可能性がある。
業界関係者なら知っていても、あまり公になってない事実がある。JR東日本グループは小売りの事業規模ではすでに高島屋グループを追い抜いているのだ。JR東日本グループ売上高1兆0290億円、高島屋グループ1兆0074億円。つまり国内の百貨店業界トップの高島屋グループを凌駕しているのだ。
たまたま、ルミネなどでイベントを手がけている知り合いから「すごい勢いで伸びている」と聞いていたが、ここまで伸びているとは気づかなかった。こうした市場動向を見るにつけ、伊藤さんが指摘するように、多様な消費ルートでの判断が必要になったといえるだろう。
ついでと言っては何だが、冒頭に紹介したテレビ通販市場について触れておこう。こちらは主要11社の売り上げが4年で倍増している。テレビ通販は放送の時間量が売り上げに直結する。
テレビ広告費が減少傾向にあり、その分CMの代わりに放送枠をテレビ通販会社に売るケースが増えているのだ。この傾向は地方局ほど多い。もちろんCS放送などでのチャンネル数も増えている。
そしてその背景にはケータイがあった。テレビ通販とケータイとの関係はどうなっているのか。
若者の視聴者が多い深夜のテレビ通販の申し込みはケータイからの申し込みが増えている。そこでワンセグを利用したワンセグ独自のテレビ通販番組の登場も予定され、10年のケータイテレビ通販の市場は今のテレビ通販に匹敵する規模(約3000億円)になる可能性を秘めているというのだ。
加えて、テレビ通販各社が期待しているのは、11年のテレビの地上デジタル移行後のアナログの跡地利用だ。一部がケータイで受信する放送事業に割り当てられる方向である。モバイル通信キャリア、テレビ局、商事会社などがすでにビジネスチャンスを求めて動いている。
テレビ通販各社は購入者のデータを集めて消費者動向の分析を行っている。それがケータイテレビ通販時代に向けての消費を促す仕組みにつながる。
こうしてみるとなおさら、消費動向は多様化しつつある。消費ルートの多様化を真剣に考えるべき時が来ている。
※参考 日経新聞7月9日、8月2日、8月5日/07年週刊ダイヤモンド5/26号
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