海の向こうの大リーグの夢の球宴でのイチローのMVPの快挙はさておき、国内のプロ野球、それもキャンプの「経済効果」の話です。スポーツコンベンション地をリードする沖縄ならではの話題です。前回、富士宮の焼きそばの「経済波及効果」を取り上げましたので、ちょっと較べてみるのも面白いでしょう。
キャンプの方は経済の〈効果〉と謳ってあり〈波及効果〉ではありません。(単に呼び方の違いだと思いますが)違いは、焼きソバのように、メディアが取り上げた回数を広告費に換算などはしていない、ということです。現実的に難しいでしょう、大変な量の報道ですから。
報道の量もあるのでしょうが、調査を行ったのが銀行系調査機関だからでしょうか、産業連関表とか、産業分類75部門表を参考にしたとか、素人にはわかりにくい算定方法で数値をだし、試算をしています。おそらく「経済効果」や「経済波及効果」を算定するときのやり方なのでしょうけれど、ここではそこまでは触れません。
07年2月、沖縄では日本ハム、広島、中日、横浜、オリックス、ヤクルト、阪神、楽天の8球団(沖縄でのキャンプの開始年順)がキャンプをしています。79年に日本ハム(投手陣のみ)がキャンプをして以来、沖縄でのプロ野球のキャンプは29年目になります。
キャンプ期間の県外からの滞在者数は、8球団合計で選手・球団関係者が約840人、報道関係者や解説者が約2,300人と前年とほぼ同数、それに県外からの観客約2万8,400人(前年約2万5,100人)が加わり、合計すると約3万1,540人となり前年(約2万8,200人)を約3,340人上回っています。
これに沖縄県内の観客をあわせると、期間中の観客の数は約22万7,400人(球団広報などの発表・オープン戦も含む)と前年(約17万1,100人)を約5万6,300人も上回っています。
これは前年日本一の日本ハムやセリーグ優勝の中日が参加し、楽天の大物ルーキー田中選手などが話題を呼んだからでしょう。
それでキャンプ中の、県外からの滞在者の宿泊、飲食、娯楽、レジャー等の支出、また県民の見学における飲食やグッズ等のみやげ品の購入、それに地元市町村の施設などのインフラ整備などの経費を含めると、支出額の試算は総額で35億5900万円(直接支出額)となり、前年(33億3000万円)を上回っています。下の図表がその内訳です。
春期キャンプ関連支出額
支出項目 支出額 (百万円)
宿泊費 1,018
飲食費 756
みやげ品購入 595
交通費 399
娯楽レジャー 363
練習施設の整備 163
クリーニング代 57
アルバイト支払い 40
施設使用料 25
その他 143
合 計 3,559
この直接支出額の約35億5,900万円に沖縄県内の産業全体の自給率(100%以下)を掛けると、県内で供給された分として約31億7,500万円が求められ、この額が県内で支出される宿泊費や飲食費や交通費や施設整備費などの直接効果となります。
このあたりは数字だけを頭にいれて読みとばしてください。この直接効果である当該産業のほかに原材料やサービスなどを提供している産業の売り上げも当然伸びることになります。このことを一次間接波及効果といい、その額が12億9,300万円となります。
さらに直接効果や一次間接波及効果のある産業に勤める人たちの所得の増加があり、その人たちの消費の増加などによる他の産業の生産を誘発する効果として二次間接波及効果が求められ、その額が8億6900万円となります。
そしてこれらの直接効果、一次間接波及効果、二次間接波及効果を合わせたものを総合効果(生産誘発額)といい、その合計が53億3,700万円となり、これがプロ野球沖縄キャンプの経済効果となります。ちなみに前年(50億4,100万円)より2億9,600万円増えています。
(厳密にやると、次々と他の産業を誘発する効果が生じますので、結構面倒な計算をしなければならないということです)
で、今年の経済効果である生産誘発額53億3,700万円を産業別にみると、宿泊業が約10億2,100万円ともっとも多く、次に鉱業・製造業の6億9,100万円、さらに飲食店の約6億1,400万円、商業の4億1,100万円と続きます。
それからこうした数値による経済効果とは別に、なんといってもマスコミが取り上げることによる沖縄のPR効果ははかりしれないものがありますし、プロが使用した施設は、社会人や大学などの野球部の合宿にも数多く使用されますので、その分の経済効果も多大なものがあります。
まだあります。キャンプを通しての子供たちへの野球教室があります。プロの選手に直接接する機会はこれ以上ない教育効果ともいえます。
で、沖縄ではさらなるスポーツコンベンション地のイメージを高めようと、巨人軍の誘致を積極的にすすめています。試算によれば、巨人軍だけで約19億円の経済効果が見込まれるとのことです。そういえば、熾烈な誘致合戦も話題になりました。
いずれにしろ、地域振興であれ集客イベントであれ、仕掛けを施して成功させ、こうして経済波及効果なるものを算出するようになりたいものです。
※参考 りゅうぎん総合研究所の資料
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