今月の2日と3日、ご当地グルメ「第2回B-1グランプリ」が静岡県富士宮市で開かれた。全国の市町村から21のご当地グルメが参加し、開催地富士宮の「焼きそば」が昨年に引き続いてグランプリを獲得。2日間の人出は富士宮市の人口10万人のほぼ2倍といえる25万人が来場した。このイベントはマスコミ各社がとりあげたのでまだ記憶に新しい。
富士宮市の有志が「B級グルメ」と銘打ち食による「焼そば」を「まちおこし」に掲げて6年。その6年間(平成13年~18年)で「焼きそば」がどれだけ経済波及効果をあげたかを都市計画や地域開発を手掛ける静岡市の㈱地域デザイン研究所が推計している。
たかが焼きそばというなかれ、いまや全国ブランドになった富士宮の「焼そば」である。驚いたことに、その総額が「217億円」というのである。
まちおこしの経済波及効果の算定はわかりにくいもの。富士宮市の場合、焼きそばのわき役ともいえる青海苔や紅しょうがまできっちり算出されていて興味深い。
麺の販売額だけでも80億円増え、下に示したのはその関連する素材の相手役とわき役陣の総額である。これだけでも7億7千万円に達している。
キャベツ 使用量 1,890,000㎏ 消費額 377,300,000円
肉かす 使用量 93,000㎏ 消費額 93,050,000円
ソース 使用量 370,000㍑ 消費額 186,100,000円
だし粉、青海苔 使用量 19,000㎏ 消費額 18,600,000円
紅しょうが 使用量 93,000㎏ 消費額 9 3,050,000円
ほかにもメディアがとりあげた回数を広告費に換算している。テレビが133回の放送回数で3億7千万円、新聞が240回で3億5千万円、雑誌が105回で2億円、ラジオが20回で1900万円という具合で、総額では9億2千万円になる。
まだある。県内からの日帰り観光客が63万人で35億6千万円、県外の日帰り客が1110万人で81億5千万円、ほかにツアー客が4500人で3800万円、視察が122団体で2200万円、イベントへの参加が43回あり1千700万円という具合だ。これはもう立派な観光地といえる。
富士宮市は日本の霊峰富士山の南斜面に位置する温暖で自然環境の素晴らしい風光明媚な街であり、この街には富士山の頂上があることから日本一標高の高い市でもある。また日本一の標高差を持つ街でもある(標高差35m~3776m)。
いまでこそ、富士宮市は「焼そば」で知られているけれども、ほかにもこの街には全国にある1,300社の浅間神社の総本宮「富士山本宮浅間神社」を擁する街でもある。
6年前、まちづくりに関心のある市民60人が集まった。普通なら市街地の商店主などが多いのだが、富士宮市の場合は周辺に住む一般市民が多かった(学生、主婦、自営業者、会社員等)。
焼きそばが全国ブランになったのはメディアによる紹介が大きい。行動してわずか半年で、地元のテレビ、ラジオ、新聞はもとより、中央のテレビ局、中央の新聞各紙、中央の雑誌等々がこの「まちおこし」を次々とりあげている。この間、行政の予算は一切つかっていない。
「ポイントはネーミングにある」と「富士宮焼きそば学会」会長の渡辺英彦さんが言っている。「情報発信にはなによりもネーミングが重要」だと。
「やきそば振興会」「やきそばファンクラブ」ではだめで、「やきそば学会」だからインパクトがあると。さらには「やきそばG麺」「三者麺談」とあり、徹底してギャグを取り入れ、そのミスマッチのネーミングで好奇心を集めたというのだ。
「B級グルメ」と呼び身近な「焼そば」を持ち出し、「B―1グランプリ」という見事なネーミング。そこにはイベントに必要な「話題性」があり、だれにも受け入れられる「単純性」があり、誰もが求める「今日性」があり、それに「共感性」と「ドラマ性」のある演出があり、「意外性」「伝播性」も加わり、最後に「富士宮の」という「地域制」がある。
しっかり計算しつくされている。つまり、ここには、イベントの要件ともいえる必要十分条件の発想や展開の要素がことごとく盛り込まれている。それを成し遂げたのが、一連のギャグのネーミングに代表される「ソフト力」。ソフトで勝ち取った全国ブランドといえる。
ところで、知ってましたか? 本当に、富士宮で食べられてきたのは「焼そば」ではなく「お好み焼き」だったということを……。
参考 「富士宮やきそば学会」ホームページより
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